news

TOP > articles > 南極星、北極圏へ フィンランドの秋 - 前半 -

南極星、北極圏へ フィンランドの秋 - 前半 -

Musim Gugur Finlandia

ヘルシンキから一気に北極圏のイヴァロ(Ivalo)へ、そこからイナリ(Inari)へ向かう。

「イナリ」はフィンランド語で「キツネ」の意味。イナリのシンボルは当然ながらホッキョクギツネで、キツネをモチーフにした絵や雑貨が土産物として、いろいろ売られている。日本でも、神様の使いのキツネは「稲荷(いなり)」という。この奇妙な符号は、どう考えればいいのだろう?


キツネの地イナリにはオーロラを見に来た。オーロラはフィンランド語で「revontuli」(狐の火)と言う。闇を駆けるキツネのしっぽから火花が飛び散りオーロラになる、という伝承がある。ラップランドの先住民族サーメ人の間では死者の霊魂とも考えられ、オーロラが出ている間は恐れて外に出なかったという。

イナリまでオーロラを見に来たものの、日本からシベリア大陸を越えてフィンランドに至るまで、眼下にはずっと雲の海が続いていた。天気予報の降水確率は連日、約90%。この季節のヨーロッパでは、天気は毎日ころころ変わるものではなく、空を覆った雲はなかなか動かない。オーロラが見られる可能性は低かった。オーロラは星を見るのと同じで、雨はもちろん、雲がかかっていては見られない。たとえ晴れていてもオーロラが「出る」時と「出ない」時がある。前回も1週間フィンランドに滞在したが、オーロラは一度も見られなかった。

フィンランドで3番目に大きい湖、イナリ湖。湖畔の宿から静かに凪いだ湖を見るイヴァロ空港はフィンランド最北の空港だ。雨模様で、道も白樺の木立も雨に濡れていたが、車で30分ほど走ってイナリ湖畔の宿に着くと、少し晴れてきた。

レセプションでトナカイの骨のキーホルダーに付けたカギをもらう。イナリ湖が見渡せる白樺の林の中に立つコテージは、キッチンもサウナも暖炉もすべてが揃っていて快適だ。部屋の内装はすべて木で、裂き織りのようなラグが敷いてある。暖炉に薪をくべたり、サウナに入ったり、夕食を作ったりしながら、暗くなるのを待った。

太陽の光を集めたような白樺の紅葉実は、ここは母が見つけた絶好のオーロラ観測ポイント。目の前が湖なので邪魔な灯りがない。湖は北側にあり(オーロラは北の空によく出る)、オーロラが出ているかどうか部屋から確かめられる。さらに、オーロラが出ると湖面にオーロラが映るのだ。

北欧の夕暮れは長い。暗くなるのは途方もなくゆっくりで、空にはいつまでも薄明かりが残っている。夜9時過ぎ、「まだ明るいかな」と言いながら、外へ出てみた。すると、湖の上に、ぼんやりした光の帯のようなものが動いているように見えた。あまり確信が持てないまま、母に「あれは?」と聞くと、興奮した様子で「オーロラだ!」。身支度をして、あわてて外へ飛び出した。


オーロラ変化


想像していたよりずっと動きが激しい。めまぐるしく形を変える。空のいろいろな場所で、明るくなったり、すっと消えたりする。それが月明かりのように湖面に映っている。

湖の上で、光の帯の先がどんどんどんどん伸びて行って、先端が折り返したと思ったら、すっと消える。また帯が現れる。それを繰り返しながら、帯は少しずつ、北斗七星のかかる上方へと上がって行き、少しずつ、はっきりした帯状へと全体が連なっていく。空のあちらでもこちらでも明るくなり、いろんな形になり、やがて、虹のように湖面全体を覆う半円形になった。まるで雲の向こうから薄日が差しているように、ぼんやりと明るい。


オーロラの色は白っぽく、雲のように見える。雲と違うのは、形がどんどん変わること、縦方向に線状のものが現れること、オーロラ越しに星が輝いていること。

オーロラは雲と違って、星を隠すことはない。オーロラの出ている空でも星はキラキラと輝き、星とオーロラの競演となる。オーロラと北斗七星の組み合わせは美しかった。

オーロラというと、カーテン状のものが空にかかって、ひらひら揺れている、というイメージの方が多いだろう。そうなる時もあるが、実際の形はもっと多種多彩だ。ほぼ天頂から光が放射状に現れたり、天の川のように太い筋となって全天を覆ったり。

写真に撮ると、緑や赤の鮮やかな色に写るが、実際の色は薄く、雲のように見えるオーロラが多い。緑がかった白っぽい色が多く、赤いオーロラは珍しい(赤いオーロラは不吉とされる)。さらに、母の言葉で「なるほど」と思ったのは、「オーロラを映像で流す時、必ず『シャラシャラシャラ......』といった変な音楽が流れるでしょう。実際のオーロラは無音」。静寂の中で激しい動きが繰り広げられていることが、得も言われぬ迫力になっている。

北の空での動きが特に激しく、遠くで犬がほえている。「幻想的だな」とうっとりするより、ちょっと恐ろしい感じだ。これがノーザン・ライツ......。

朝焼けのイナリ湖


南極星、北極圏へ フィンランドの秋 - 後半 -


文・写真...池田華子
イラスト...若林昌子
Text & Photo by Ikeda Hanako
Illustration by Wakabayashi Masako

monthly archives

インドネシアの旅行社 - J NET TRAVEL

会社設立・管理・経営をサポート JAC - Japan Asia Consultants