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インドネシア温泉めぐり 第9回 チボランの湯

Mata Air Panas di Indonesia

Cibolang

7月号で紹介したパトハ山から
東に直線で25キロに対峙するマラバール山群。
その南に広がるマラバール高原は、標高1500メートル。
標高では500メートル足らないものの、
中部ジャワのディエン高原と好対照だ。
ヒンドゥーのにおいプンプンのこの地にも、
素晴らしい湯が湧く。

(左)熱に強いクロレラ系の藻が浮かぶ源泉につながる貯湯池。ここでいったん冷ますはずだが、底から湯が湧いてしまい、効果は疑問。まだ60℃近くある

奇怪な形のワヤン・ウィンドゥ山(左)。右がウィンドゥ山で、この麓に湯が湧く

ジャワ最大の茶畑に湧く名湯。
ツツジに日本を偲ぶ。

チボランの源泉群
pH7前後/60℃以上
公営の湯(Air Panas Cibolang)
45℃前後
椿の湯(Tirta Camelia)
40℃前後

ラジオ・マラバール跡。アンテナは左の山の山腹から奥に網状に這わせた

バンドン南部のチマウン(Cimaung)から、つづら折れの山道を上がりきると、チウレンチャ湖(Situ Ciulenca)とミルクキャラメルで知られるパガレンガン(Pangalengan)に着く。パガレンガンから、さらに5キロほど南東に進むとマラバール(Malabar)高原が広がる。マラバールの地名は、インド南部のマラバール地方(原意は「高原地帯」)に通じる。

マラバールという響きはなんとも快い。ここからパパンダヤン山(Gunung Papandayan)西麓の標高1600〜1700メートル、南北40キロにわたって広がるジャワ島最大のバカデカイ茶畑には、サントア(Santoa)、アルジュナ(Arjuna)、ワナギリ(Wanagiri)といったヒンドゥー文化にちなんだ地名が続き、目を閉じると1000年以上前の亡霊のざわめきが聞こえてくるような錯覚にとらわれる。

オフロード好きには、茶畑を貫きPakenjengまで達する30キロ余りの縦断路、2002年の噴火で途中寸断されているものの、パパンダヤン山の火口に達する山岳路走破がこたえられない。

石灰岩の露岩の上から湯が落ちる。ここも昔は海底だったのだ

マラバール山群(最高峰は標高2343メートル)はマラバール高原の北に座し、その1つのプンタン山(Gunung Puntang、標高2143メートル)には、1923年に開局して世界中に電波を送り込んだラジオ・マラバール局(Radio Malabar)が建設された。当時、アジアで最大の出力を誇ったラジオ局だ。今では廃墟となった建物と山腹に這わせた巨大な網状アンテナ群の跡を見ることができる。

高原の中ほどにワヤン・ウィンドゥ山(Gunung Wayang Windu、標高2198メートル、Wayangは影絵ではなく「風の神々」の意、Winduは「世紀」の意)と呼ばれる、奇怪な形をなした山塊があり、向かって右側のウィンドゥ山の麓に名湯チボラン(Air Panas Cibolang)がある。ワリニ(Walini)ブランドのPTPN 8(PT. Perkubunan Nusantara VIII)が経営する広大な茶畑の縁に位置する。

カメリアの湯の温泉プールカメリアの湯。タイルはくすんでいるが、湯は限りなく透明

椿の湯に咲くツツジが懐かしさを呼ぶ
PTPN 8直営の「カメリアの湯(Tirta Camelia)」、その奥には1985年に開業した公営の温泉施設がある。無色透明の湯が山裾の至る所からこんこんと湧き出し、貯湯池に流れる様は見ていて飽きない。

源泉は60℃以上と熱いので、いったん池に集めて自然冷却をするも、公営の湯の個室風呂は45℃とかなり熱い。カメリアの湯は山から引いた水で割っているので手ごろな温度。庭に咲くカメリアならぬアゼリア(ツツジ)に日本を偲ぶ。

どこまでも広がる茶畑。本当に広大だ

湯はヨードを含み、リューマチ、神経痛に効くといわれる。こういう温泉の湯溜まりには「アナゴの白蒸し」と見紛う、色が抜けた「茹で蛇」やら「茹でトカゲ」「茹でガエル」の類によく出くわす。ここもご多分に洩れず、道を間違えた哀れな姿に遭遇する。彼らも薬効に貢献しているのであろうと、思わず合掌! そのせいか?ここの湯はうまい!ワリニ茶は香りに定評があり、この湯で煎れた茶は絶品!!

出来損ないの火口、Kawah Urung

ここの温泉に建ち並ぶワルンには、アンカー、ビンタン、ギネスがたくさん置いてあるので不自由しない。定年退職してバンドンから移り住んだ老夫婦が営む「Warung Sindang Heula」は最近、冷蔵庫を購入したので、湯に入る前に立ち寄って冷やしておいてもらうのも手だ。 

温泉裏のウィンドゥ山に登ると、中腹にカワ・ウルン(Kawah Urung=「成りそこないの火口」)と呼ばれる墳口があり、天気が良ければ、広大な茶畑が鳥瞰できる。

茶畑に囲まれたボスカの墓

マラバールの茶作りは、19世紀末にオランダ人のボスカ(K. A. R. Bosccha)によって始まり、100年余りの歴史を持つ。ボスカは茶園経営の傍ら、地元民への教育に力を入れ、いくつかの学校を建立した。その中には、現バンドン工科大学の礎となる高等技術学校もあった。

また、後に第1回アジア・アフリカ会議が開かれたバンドンの「Gedung Merdeka Bandung」を建立したことでも知られる。茶畑の中にたたずむ墓は花に囲まれ、良く手入れされており、ボスカの偉業を偲んで訪れる人も多い。

公営チボランの湯の個室棟

近くには地熱発電所があり、この地熱で地下水が温められて噴出しているのであろう。そうそう、カメリアの湯のトイレに引いてある水は実は湯そのもので、用足し後、不用意にかけたら絶句し、もんどり打った。この出来事以来、白猿の尻周りはさらに赤くなった。


アクセス

バンドン有料道路をMohamad Tohaで下り、Banjaran経由Pangalenganを目指す(Jl. Raya Pangalengan)。どの街も市が立ち、混雑するので、早めに出かけたい。Pangalenganを示す標識が要所要所に出てくるので、目は開けておこう。Mohamad Tohaから約14kmでBanjaran、そこから5kmで左にMakarsari (Wisata Gunung Puntang) への分岐を見送る(Radio Malabarの廃墟がある公園入口まで8km)。

Cimaungの街を抜けると、道はくねくねと高度を稼ぎPangalenganへ(Mohamad Tohaから約37km)。

Pangalenganから5kmでマラバール茶園のゲートに着く。ゲートで入場料、車1台2000ルピアを徴収される。チボランの湯は、左折して茶園の事務所、製茶工場を過ぎ、小さい沼を回り込み、約5kmで「Air Panas Cibolang 1.5km」という看板が現れるので、そこを左折。凸凹道を、地熱発電所への送気パイプを目印に山裾を目指すと、温泉にたどり着く。

茶園入口のゲートから右折するとボスカの墓、茶園経営のゲストハウス(ホテル形式と瀟洒なバンガローが10戸あり、バンガローは自炊可)、ビラ・ボスカ(ボスカが住んだ家)に通じる。

入浴料

公営の湯(Air Panas Cibolang)は、入場料大人1万ルピア、カメリアの湯は大人5000ルピア、個室湯はそれぞれ1人5000ルピア。(2011年7月現在)


文・写真...吾妻白猿
Text & photo by Azuma no Shirozaru

吾妻白猿(あずまのしろざる)
生息域:ジャワ、スマトラ、カリマンタンにて通年見られる。夜行性のオス。地元民からはMas Monyetと呼ばれている。最近はボゴールを離れ、ガルットの山中で温泉発掘に精を出しているという噂が流れている。

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